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テニス上達へのナビゲーションbrog

ムーブメントについて

関節モーメント

スポーツにおいてモーメントを考える場合、外部のモーメントと内部のモーメントの2つについて考えなければならない。

一つは、重力や床反力など外部の影響(外力)によって発生させられるモーメント(力のモーメント)。二つ目は、力のモーメントと反対の極性を持つ、骨格筋の張力によって生み出されるモーメント(関節モーメント)である。この関係性は、外力によって屈曲させられた膝関節に対して膝関節を伸展させようとする、スポーツにおける移動スキル等を説明することに役立つ。関節軸から力の作用点までの距離(L)は人体の構造上変化することはないため、関節モーメントは筋力(F)と比例関係となる。

トレーニングでは、意図的に力のモーメントを大きくさせ、反対の極性で生じるモーメントを引き出す(例:姿勢によって股関節屈曲モーメントを大きくさせ、必要な股関節伸展筋力を大きくさせることも)ある。

トレーニング計画ーいつ、なんのトレーニングを行うかー

「期分け」とは

今回はテニス選手のトレーニングの「期分け」について解説していきます。

期分けって…?聞きなれない言葉かもしれませんが、もしかしたら無意識に皆さんも行っているかもしれません。

例えば一ヶ月後のテストに向けて、基礎を勉強して定着させた後、応用問題に取り組み、そして本番の問題を予測して予想問題を作って取り組む…といったテストという目標に向けての一連の作業を段階的に行うこと。社内プレゼンに必要な事柄を整理して、スライドを作った後、本番に近い状況設定(時間・空間)で練習するといった発表に向けての一連の作業を、段階的に行なっていくこと…など、他にも様々あると思いますが、本番に向けてやるべきことを段階的に調整することを言います。無論、トレーニングも例外ではありません!

 

いわゆる育成ジュニアの選手たちは、目標とする試合に万全な状態で挑むためにトレーニングを段階的に行なっていく必要があります。これを間違ってしまうと、例えば試合直前に筋トレを一生懸命行なってしまい、当日筋肉痛で動けない…なんてことになってしまいます。トレーナーは、刺激に対する生理学的な身体応答の時間も逆算して考える必要があります。

試合のスケジュールは選手個人によって様々ですが、トレーニング計画の組み方として、試合が遠い時期から①準備期→②移行期→③試合期 と期を3つに分けて行なうのが基本の考え方で、これがトレーニング計画を「期分け」するということです。各期に行う内容は以下のようになります。

  •  目標とする試合まで一月半以上ある「準備期」

   筋肉量を増やす、基礎体力をつけるトレーニングを主に行う

  • 試合まで3週間位ある「移行期」

   力を発揮するトレーニングを主に行う

  • 試合直前の「試合期」

   テニスのスキルに近づける

 

こうした期分けは、まず体力を身につけ、その使い方を本番の試合に向けて調整していくという考え方に基づいています。しかしテニス選手のスケジュールは様々で、年間を通して試合がある場合がほとんどです。そのため準備期で基礎を作りたい時期でも、筋トレではなく動きづくりを重視することもあります。

特にプロ選手は海外を転戦しており、拠点でじっくりトレーニングを行える機会は少ないので、能力向上のためには各自の空き時間で取り組んでもらえるようトレーニング方法を身につけてもらうしかありません。個人のスケジュールで行動するテニス選手は自立して活動することが求められます。選手自身も「期分け」に対して、ある程度の知識を持っている必要があるのです。

テニスとフットワーク③ー重力と地面反力ー

テニスに必要なフットワーク

テニス(シングルス)は、縦11.89m・横8.23mの長方形のコートで、相手に応じて適切にポジショニングした位置から、グラウンドストロークのために2.5m~4.5m以内の移動をしたり、サイドラインいっぱいにボールを追いかけるために7m移動したり、止まったり…を繰り返す競技です。これらは可能な限り素早く連続させ、相手に空間的・時間的な余裕を与えないことが勝つために重要となります。

今回のブログでは、これらフットワークを理解するのに必要な「重心」「床反力」を視覚化して説明していきます。

 

自分の重心をコートの中で移動させる

人間が静止している状態を力学的に見ると、およそ体の中心にある、重心(黄色丸)に作用する重力(=体重)床反力(地面からの反作用)が互いに等しく、打ち消し合っている状態(加速度が生まれない状態)です。テニスにおける静止の局面であるパワーポジションを例に見てみましょう(図1)

 

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 図1.静止している状態(パワーポジション) 

黄色:重心に作用する重力  赤色:重心に作用する床反力

 

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図2.静止からの1歩目(クロスオーバーステップ)

図1では、重心にかかる下向きの重力(体重80kgの人は約800N)と床反力の上(鉛直)方向への大きさ(800N)が釣り合っているので静止しています。また、図2のように床反力が重心にかかる下向きの重力よりも大きくなればその分、重心は移動します。

体を移動させるということは、地面を蹴って重力以上の大きな床反力を生み出し、それを重心に作用させて動かすということです。そのため体の移動は、重心位置の動的な変化として捉え、重心が空中をふわふわ移動しているものと考えます。図2のように床反力が左右方向へ作用した場合、その方向に重心の加速度(速度が変化すること)が増加します。

 

そして、優れたフットワークの一つのポイントは重心に対し、移動方向への床反力を効率よく伝えられることでもあります。「効率良く」とは、地面を蹴る力を大きくすること(矢印の長さを大きくすること)、そして曲げた股関節・膝関節・足関節を同じ方向に一気に伸ばす(矢印を真っ直ぐに伸ばすイメージを持つこと)です。なので膝を伸ばすとき、膝が内側に入っていると効率よく力を伝えることができなくなってしまうのです。

 

トレーニングメニュー

・スクワットジャンプ

立ち幅跳び

・3段飛び…  など

テニスとフットワーク②―オンコートスピード―

短い距離でスピードを出すには

前回のブログで、テニスは50・100m走で分かるようなトップスピード能力の貢献はほぼ無いことが分かりました。その理由は「必要な助走距離が足りないから」でしたね。

 

しかし、遠いところに来たボールに対し素早く追いついてフォアハンドやバックハンドグラウンドストロークを打つことを求められる場面があります。そのために約4m(1Pの平均移動距離)の短い距離でも可能な限りスピードを引き出せる能力がテニスには求められます。短距離での加速が上手く、抜群のコートカバー力を誇る清水悠太選手のプレーを覗いてみましょう。

 

www.youtube.com

 

最初のトレーニング動画では、6mの距離をおよそ1.4秒内でカバーリングしています。つまり4mを1秒でカバーできる相手・・・敵に回したら恐ろしいですね(笑) ラケットを持った時でも、トレーニング動画の時と遜色ないスピードで動けています。

清水選手の優れた点は、ピッチ(歩数)を急激に増加させることによって加速できることです。1秒以内に4歩出します。

 

短い距離での速度の立ち上がりには、このようにピッチの増加が大きく貢献します。しかし1歩1歩が短いのでは意味がありませんよね。足の接地時間が短いながらも大きな推進力を得て、素早く次の足を出しているから優れているのです。

 

推進力は「地面を蹴る力(F)×作用する時間(t)」(方向は無視します)という力積に基づいて考えます。足の接地時間(t)を短くしつつ、推進力を得ているわけですから単位時間あたりの(F)が大きいということです。

 

推進力 = 蹴る力(F) × 足の接地時間(t)

 

 そのため「短時間に大きな力を発揮することを素早く繰り返す」トレーニングが有効となります。代表的なトレーニングがプライオメトリクストレーニングです。

 

ショートレスポンス(接地時間0.25秒以下)

フットワークに役立つトレーニングと言われてあなたは何を思い浮かべるでしょうか。下半身を使うスクワット、レッグプレスマシーン、単純な短距離走、ラダー・・・etc 

これらもやり方によっては正しいトレーニングです。しかし「スクワットが100kg上がる」「レッグプレスが180kg上がる」といった最大筋力がテニスコート上でのフットワークに反映されているかは別に考えなければいけません。

なぜなら、重いウェイトを上げる時のようなじわーっとパワー発揮する場面はテニスにおいてサーブを除いて無いからです。

 

コートでの素早いフットワークにおける足の接地時間は0.25秒以下のショートレスポンスです。この時間内で推進力を発揮させるということは、時間をかけて発揮される最大筋力の貢献はまずないということです。

つまり、テニスコートで素早くなるためには、短時間(短い接地時間)で大きな力を発揮することを目標にプライオメトリクストレーニングを導入しましょう。

 

ではプライオメトリクストレーニングの例を挙げてみます。

www.youtube.com

 

プライオメトリクスとは、着地で伸ばされた足の筋肉(腱)が、すぐに筋活動を行うことによって縮む「弾性収縮」を利用した運動です。疲れてくると動作が遅くなり弾性収縮が上手く利用できないため、トレーニングの際は休憩を多めに挟みながら行う必要があります。

 

ボックスドリルの例のように接地時間を短くし、足を素早く入れ替え、その中でパワー発揮するトレーニングを繰り返すことによって短い距離でも推進力を得て、可能な限りトップスピードを引き出せるようになります。テニスだけでなく、バスケットボールやハンドボール等の助走距離の少ないコート条件下でスピードが求められる競技では有効なトレーニングとなります。

 

まとめ

プライオメトリクスについて、何となくイメージしていただけたでしょうか。

プライオメトリクスを一言で表すと「反動を使って素早く動き出すこと」です。これだけでも覚えればトレーニングに関する知識が一層深まること間違いなしです。

このような神経ー筋の改善トレーニングはやったことがない人ほど効果が高いので、試してみる価値があります。俗に言う使ったことない神経を使うというやつですね。 

テニスとフットワーク-オンコートのSAQ-

テニスと最大疾走速度

さて、記念すべき第一回目の記事は「足の速さ」についてです。

球技スポーツにおいて、足が速いことは重要な要素となります。

ボールに素早く追いつくため、素早く陣地に戻るためなど当たり前ですが速いことは基本的に有利に働きます。

 

人間の最大疾走速度(トップスピード)というものは、直線走を行わせて20~25メートル地点において出現します。逆に言えば、およそ20mの助走がなければその人が持つ最大疾走速度は出せないということです。学校の体力測定にある50m走測定などはこの最大疾走速度の能力を評価しているわけですね。(補足:陸上選手は約50m地点で出現します。そのため短距離種目は100m~となります)

このような測定で明らかになったトップスピードはテニスにおいて必要なのでしょうか。テニスにおいて重要な、ボールに素早く追いつける、素早くポジショニングする能力とどのように関わりがあるのでしょうか。

 

 

スピード・アジリティ・クイックネス

 スポーツの世界では共通して「スピード」「アジリティ」「クイックネス」という言葉を用いてフットワークを評価します。

 

スピードとは上述した最大疾走能力、いわゆるトップスピードの能力

アジリティとは、敏捷性のことで状況判断を伴う、素早い前後左右への方向転換能力

クイックネスとは、主に静止した状態から1歩目を素早く出すような反応能力です。

 

サッカー・野球・バドミントンなど競技に応じて空間が違えば、求められる能力は異なってきます。テニスはどの能力が重要なのか、テニスコートのサイズから考えてみましょう。

 

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シングルスコートは横幅約8m、縦幅約12mあります。

一般的に最大疾走速度が出現するのが直線走で20~25m地点ですから、20mの助走距離が取れないコート上においてはトップスピード能力の貢献はほぼ無いはずです

 

テニスコート上でのアジリティとは、打った後のサイドステップやクロスオーバーステップによってリカバリー(センターへ戻る)する方向転換動作と考えられます。ストローク動作の80%は2.5m~4.5m以内で行われている(Ferrauti ,2003)ため、この距離を素早く戻れることがアジリティの評価となります。ダウンザラインを相手に打たれ、サイドラインいっぱいに追いついた後などは7m位リカバリーする可能性もありますね。

 

クイックネスとは、ボールに対し素早くスタートし追いつくための、1歩目を素早く踏み出す能力です。これは、ボールを見て筋に刺激が伝わる反応(筋・神経系)、経験からの予測、スプリットステップのタイミングによって発揮されます。優れたクイックネスによって、ラリー中に素早くボールに追いつけると主導権を握ることができます。

 

以上を踏まえ、打点に素早く到達(クイックネス)し素早く戻る(アジリティ)能力がテニスにおけるフットワークの本質であると言えます。そのためこの2つを強化することがまずは重要です。共通しているのは素早く蹴り出す能力であり、筋・神経系を強化できるプライオメトリクストレーニング(ジャンプ→着地のエネルギーで素早く動き出すトレーニング)やレッグプレス・スクワット等で強化することができます。予測能力は、日々観察力を磨くことがそのままトレーニングになるでしょう。

 

短距離が遅くても、どんなボールにも追いつける人は周りにいませんか?

テニスのフットワークは3・4歩内で優れていることが重要なのです。

ブログはじめました!

皆様はじめまして!ストレングス&コンディショニングコーチの村上です。

ストレングス&コンディショニングコーチとは、筋力・柔軟性・持久力など競技パフォーマンスに関連する全ての要素をトレーニング指導する指導者のことで、広くはトレーナーと認識されます。

 

現在はテニス競技に携わっており、プロ選手、ジュニア選手、愛好家、車椅子の方など幅広くトレーニング指導の機会を頂いております。テニスに限らずトップアスリートのプレーは、多くの子どもやスポーツ愛好家にとって憧れるものであり、どうすればこんなプレーができるんだろう…という探究心は飽くなきものです。そうした探究心に、根拠を持って応えられるトレーナーで在りたいと考えています。

 

このブログでは、実際の現場指導やスポーツ研究の現場から蓄積され得られたエビデンス(根拠)を基に記事を書き、、、全てのレベルのアスリート、クラブで楽しんでいる会員さん、ダイエットや流行りにのってラケットを衝動買いした人、指導者・保護者の方々...など多くの人のテニス上達をnavigation(道案内)できるよう発信していきたいと考えています。

 

主なテーマとして・・・

上手い人の特徴(からだの使い方・考え方)ってなんだろう?

テニスってどんな体力がつくの?つければ良いの?

そのためにはどんな練習方法・トレーニングが有効なの?

食事はどんなことに配慮すればいいの?

 

などをスポーツ科学的視点(ときどき小難しい話にもなりますが)から書いていきますので、宜しくお願い致します!!